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東京高等裁判所 平成9年(行ケ)325号 判決

イギリス国サザンプトン エス052 9ゼットビー

ノースバツデスレイ セント クリストファーズ ワークス

(番地なし)

脱退原告(被参加人)

ボードン(ユーケイ)リミテッド

代表者

ハロルド チャールズウィルクス

上記同所

参加人

ボーデン・ケミカル・ユーケイ・リミテッド

代表者

アンソニー・グリーン

訴訟代理人弁護士

大野聖二

那須健人

弁理士 戸水辰男

東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号

被告(被参加人)

花王クエーカー株式会社

代表者代表取締役

常盤文克

東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号

被告(被参加人)

花王株式会社

代表者代表取締役

常盤文克

被告(被参加人)両名

訴訟代理人弁護士

中島敏

弁理士 古谷馨

古谷聡

主文

参加人の請求を棄却する。

訴訟費用は参加人の負担とする。

この判決に対する上告のための付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  参加人

特許庁が、平成6年審判第12883号事件について、平成7年11月20日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告ら(被参加人ら)の負担とする。

2  被告ら(被参加人ら)

主文1、2項と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

脱退原告(被参加人)は、名称を「鋳造用鋳型および中子の製造方法」とする特許第1554030号発明(昭和58年1月21日出願、優先権主張1982年1月21日英国、平成2年4月4日設定登録。以下「本件発明」という。)の特許権者であったが、願書に添付した明細書の訂正をすることについて、平成3年12月27日に特許法126条1項に基づく審判を請求し、訂正を求める審判が確定している(確定登録日平成7年4月11日)。

被告らは、平成6年7月29日、本件発明につき、その特許を無効とする旨の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を、平成6年審判第12883号事件として審理したうえ、平成7年11月20日、「特許第1554030号発明の特許を無効とする。」との審決をし、その謄本は、同月29日、脱退原告に送達された。

2  本件発明の要旨(上記訂正後のもの)

下記の各工程からなる鋳造用鋳型および中子の製造方法。

(Ⅰ) 粒状耐火材料を、下記(a)、(b)および(c)から成る粘結剤と混合する工程。

(a)  耐火材料の重量に基づき0.25~2.5重量%のカリウムアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂の水溶液。ただしこの水溶液の固状物含量は50~75%であり、該樹脂の重量平均分子量(Mw)は700~2000、ホルムアルデヒド:フェノールのモル比は1.2:1から2.6:1であり、KOH:フェノールのモル比は0.5:1~1.2:1であるものとする。

(b)  該水溶液の重量を基準にして0.05~3重量%の少なくとも一つのシラン、および

(c)  該水溶液の重量を基準として20~110重量%の、C1-10アルキル一価または多価アルコールとC1-10カルボン酸との低分子量ラクトンまたはエステルの少なくとも一つ。

(Ⅱ) 混合物を周囲温度中にて中子取りまたは模様型に注入する工程、

(Ⅲ) 樹脂を周囲温度中にて硬化するに任せる工程。

3  審決の理由

審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件発明が、その優先権主張日前に頒布された刊行物である欧州公開特許第27333号公報(審決甲第1号証、本訴甲第4号証、以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用例発明」という。)と同一のものといえるから、特許法29条1項3号に規定する発明に該当し、同項柱書きの規定に違反して特許登録を受けたものといえるから、特許法123条1項2号(昭和62年法律第46号による改正前のもの)の規定に該当し、無効にすべきものであるとした。

4  権利の承継

参加人は、脱退原告から、本件発明に係る特許権の譲渡を受け、平成9年6月23日、その旨の移転登録を行い、脱退原告が被告らを相手に提起していた上記審決に対する審決取消訴訟(当裁判所平成8年(行ケ)第53号審決取消請求事件)に権利承継による参加をした。なお、同事件は、脱退原告の訴訟脱退により終了した。

第3  参加人主張の取消事由の要点

審決の理由中、本件発明の要旨の認定、請求人ら(本訴被告ら)主張の無効理由イ~ハの認定、引用例の記載事項の認定、大阪市立工業研究所長平嶋恒亮作成の「アルカリレゾールの調整とその分子量測定」と題する平成4年2月7日付け報告書(審決甲第2号証、本訴甲第5号証、以下「大阪報告書」という。)、同所長富永嘉男作成の「アルカリレゾールの調整とその分子量測定」と題する平成7年7月26日付け報告書(審決甲第7号証)及び神戸理化学エ業株式会社研究部末広史朗作成の平成4年2月20日付け報告書(審決乙第1号証)の各記載事項の認定、本件発明と引用例発明の一致点の認定の一部(審決書13頁13行~14頁18行、15頁12~16行)及び相違点の認定(審決書15頁17行~16頁2行)は、いずれも認める。

審決は、引用例発明が、重量平均分子量を開示しているものと誤認する(取消事由1)とともに、これを確認するために引用例を追試したとされる大阪報告書の問題点を看過し(取消事由2)、また、引用例発明が常温硬化法を採用し、本件発明と同様の固体物含量(固状物含量と同じ。以下同様)を有するものと誤認した(取消事由3、4)結果、引用例発明が本件発明と同一であると誤って判断したものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  引用例発明における重量平均分子量の不開示(取消事由1)

本件発明のように、フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ性で反応させてアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂を得る反応は、一般的には、加熱して行われるものであるが(甲第2号証4頁右欄6行、乙第2号証244頁下から4~3行)、特定の重量平均分子量の樹脂を得るため、途中で反応を止める必要があることは、技術常識であり、被告らもこの点は熟知するところである。そして、本件発明は、アルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂を得る反応を、一定の段階で止め(甲第2号証4頁右欄10~12行)、当該樹脂の重量平均分子量(Mw)を700~2000に限定した点に特徴がある。

これに対し、引用例(甲第4号証)には、重量平均分子量の開示がなく、単に「*樹脂及びアルカリ予備混合」(同号証訳文8頁29行)と記載されているだけであり、上記反応に係る加熱温度や反応時間等の条件は記載されていない。重量平均分子量は、仮に、加熱をしなければ、本件発明規定の上記重量平均分子量よりも低い値のままであるが、加熱反応を続ければ、当該樹脂の重量平均分子量は増大し、上記の範囲を超える値となってしまう。

この点について、審決は、大阪報告書(審決甲第2号証、本訴甲第5号証)を引用例の追試として認めて、そこで得られた重量平均分子量を有するアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂を引用例は開示しているとするが、同報告書には、後記のとおり問題点があり、追試といえないことが明らかである。反対に、脱退原告及び参加人の従業員であるジェームズ・キングが、引用例を正確に追試して行った実験報告書(甲第7号証、以下「キング報告書」という。)によれば、引用例発明の重量平均分子量は、200程度(同号証訳文5頁1行)とされており、この点からも大阪報告書記載の実験は誤りである。

また、引用例発明のような塩基性のレゾール樹脂の重量平均分子量は、技術文献である日本化学会編「高分子化学の基礎」(丙第6号証、以下「本件技術文献」という。)によれば150~200とされており、このように極めて低い分子量を有するレゾール樹脂にアルカリを加えて、大阪報告書で得られたような重量平均分子量が1000を超えるような高分子の樹脂を得るためには、加熱反応を用いる必要があるが、これに関して引用例には一切示唆がない。

したがって、引用例発明は、本件発明の重量平均分子量の数値範囲を開示するものではなく、審決が、「甲第1号証には、樹脂の種類とその製造過程とが特定して記載されており、しかも、その記載された製造過程を経て実際に製造したときに、その樹脂の重量平均分子量が所定の値になるとすれば、甲第1号証に重量平均分子量は直接記載していないとしても、そのような重量平均分子量を持つ樹脂は開示されていると解すべきである。」(審決書20頁10~17行)と判断したことは、誤りというほかない。

2  大阪報告書の問題点(取消事由2)

引用例発明の実施例においては、フェノールーホルムアルデヒドレゾール樹脂の調整のため、「100%フェノール42.12重量部と50%ホルムアルデヒド水溶液53.7重量部」とを反応させるものと記載されている(甲第4号証訳文4頁4行)が、他方、大阪報告書には、「フェノール1000g、50%ホルムアルデヒド水溶液1256g」と記載されており(甲第5号証1頁)、これを重量部に換算すると、「フェノール43.95重量部とホルムアルデヒド水溶液55.21重量部」となるから、大阪報告書記載の実験は、引用例記載の実施例に準拠するものではない。

また、大阪報告書記載の実験ではpHの記載がなく、脱退原告が大阪報告書記載の実験の追試を行った報告書(甲第9号証、以下「脱退原告報告書」という。)によれば、その反応直後のpHは、8.1であったから、当該実験は、引用例記載の実施例に準拠するものではない。

したがって、審決が、大阪報告書記載の実験について、「甲第2号証記載の実験は、甲第1号証の記載に準拠して行われたものということができ、しかも、その実験結果を否定すべき根拠も発見しないのであるから、その結果は一応信頼するに足りると推定できるものであるのに対し、被請求人は、この推定を覆すに足りる証拠を提出していないことになる。従って、甲第1号証に記載された樹脂の重量平均分子量は、甲第2号証の実験結果からみて本件発明が規定する範囲内のものとみるほかない。」(審決書19頁17行~20頁3行)と判断したことも誤りである。

3  引用例発明における常温硬化法の不採用(取消事由3)

引用例の「この方法で造られた鋳造混合物を硬化させるのに要する時間は2分から24時間の幅があるが、5から45分の範囲内の硬化時間が得られるよう設定範囲を調節するのが好ましい。」(甲第4号証訳文3頁24~26行)との記載からみて、引用例発明は、硬化過程の人為的コントロールを企図するものであり、本件発明のように常温硬化法を採用するものではない。

また、本件明細書の「本発明は常温硬化法を指向するので、樹脂粘結剤は樹脂の水溶液として使用される。・・・75%以上の固体含量はあまりに高すぎる粘度の故に使用されない。」(甲第2号証3頁左欄17~23行)との記載からみて、本件発明における固体物含量は、常温硬化法との関係で臨界的意義を有するものであるのに対し、引用例記載の実施例における圧縮強度測定条件は、常温硬化法に係るものとはいえない。

4  引用例発明における固体物含量(取消事由4)

本件発明における、カリウムアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂の水溶液の固体物含量は50~75重量%であるが、引用例には、「実施例では、KOHの50%水溶液及び固体含量約80%のフェノール樹脂が使われる」(甲第4号証訳文3頁14~15行)と記載されており、この実施例における固体物含量は、本件発明における固体物含量と同じでない。

また、引用例発明において、「好ましい材料は、80~95%の固形分」(同2頁30行)と記載されており、この固体物含量の上限95%を用い、被告ら主張に係る式に従い、上記樹脂水溶液中の固体物含量を計算すると、以下のとおり、80重量%となって、本件発明の上記固体物含量の範囲外となる。

80重量%=(6〔樹脂〕×95%+3〔50%KOH〕×50%)÷(6〔樹脂〕+3〔50%KOH〕)

しかも、大阪報告書記載の実験は、前記のとおり、引用例記載の実施例に準拠するものではないから、当該実験の結果をもって、引用例記載の実施例における固体物含量と本件発明における上記固体物含量が、同じであるということはできない。

第4  被告らの反論の要点

審決の認定判断は正当であって、参加人主張の審決取消事由は、いずれも理由がない。

1  取消事由1について

本件発明が、鋳造用鋳型及び中子の製造方法に関するものであり、鋳型及び中子用の粘結剤中に高縮合度のアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂を使用するため、当該樹脂を得る反応を一定の段階で止め、その重量平均分子量(Mw)を700~2000に限定した点に特徴があることは認める。

これに対し、引用例発明も、鋳造用鋳型及び中子の製造方法に関するものであり、フェノールーホルムアルデヒド樹脂を製造するため、これらを80℃で180分間加熱反応させたものであり、大阪報告書記載の実験においても、同様の加熱条件を用いているから、当該実験は、引用例記載の実施例の追試ということができ、これによれば、調整されたアルカリレゾールの重量平均分子量は、1090及び1070とされる。したがって、引用例には、本件発明の重量平均分子量の最適数値範囲に含まれる重量平均分子量を有するカリウムアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂の水溶液が、実質的に開示されている。

参加人主張のとおり、レゾール樹脂が加熱条件下で高分子化し、条件によって固化するに至ることは技術常識であるが、本件技術文献記載の「レゾールとよばれる第1次樹脂」は、メチロール型初期縮合物であり(丙第6号証166頁、乙第2号証245頁参照)、引用例発明のレゾール樹脂と同じではないから、その平均分子量が150~200とする参加人の主張には理由がない。

したがって、この点に関する審決の判断(審決書20頁10~17行)に誤りはない。

2  取消事由2について

参加人は、脱退原告報告書(甲第9号証)に基づき、大阪報告書記載の実験において、アルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂の製造のための反応はpH8.1で行われていると主張するが、仮にそうであるとしても、pH8.1とpH8.0の差は実験誤差であり、上記実験結果は、大阪報告書記載の実験が引用例発明の実施例の追試であることを否定しない。しかも、被告において、大阪報告書記載の実験の追試実験を2回行ったところ、その各成績報告書(平成8年11月11日付け実験成績報告書・乙第1号証、以下「被告報告書1」という。平成10年1月13日付け実験成績報告書・乙第4号証、以下「被告各報告書2」という。)によれば、大阪報告書記載の実験の反応開始直後のpHは、8.0であったものと認められる。

また、参加人は、大阪報告書記載の実験と引用例記載の実施例において、フェノールの重量部とホルムアルデヒドの重量部が相違するから、大阪報告書記載の実験は、引用例記載の実施例に準拠するものではないと主張するが、ホルムアルデヒドの水溶液量は、pH8.0を得るための正当な分量であるから、そもそも上記主張には理由がないが、参加人の主張によっても、フェノールに対するホルムアルデヒドのモル比は2.00であり、他方、大阪報告書記載の実験における上記モル比は1.97であって、その差は0.03にすぎないから、フェノールーホルムアルデヒド樹脂の分子量に有意差はない。

したがって、この点に関する審決の判断(審決書19頁17行~20頁3行)に、誤りはない。

3  取消事由3について

本件発明は、樹脂を周囲温度中にて硬化させる常温硬化法を採用するものであるが、引用例発明も、その実施例1~21の全てにおいて、周囲温度18~26℃で圧縮強度試験片を作成し、当該試験片を標準大気中(20℃、50%RH)で硬化させるものであって、加熱等の処理は一切行っていないから、常温の周囲温度中において硬化させていることは、その記載からも明らかである。

したがって、この点においても、引用例発明と本件発明は同一である。

4  取消事由4について

引用例には、「実施例では、KOHの50%水溶液及び固体含量約80%のフェノール樹脂が使われる」(甲第4号証訳文3頁14~15行)と記載されているように、引用例発明における固体物含量約80%は、フェノールーホルムアルデヒド樹脂水溶液における固体物含量のことであり、カリウムアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂水溶液の固体物含量ではない。そして、引用例発明においては、上記フェノールーホルムアルデヒド樹脂水溶液に、KOHの50%水溶液が加えられるのであるから、得られる上記樹脂水溶液の固体物含量は、当然に、80%より小さく、本件発明規定の「50~75%」の範囲内にあることは明らかである。

参加人は、引用例発明において、好ましいとされる固形物含量「80~95%」の上限95%を用い、被告ら主張に係る式に従い、上記樹脂水溶液中の固体物含量を80.0重量%と計算し、この計算値が本件発明規定の固体物含量の範囲外である旨主張するが、このように上限95%のみを取り出して行う計算には意味がない。引用例発明において、固形物含量80%に基づいてその重量%を計算すると、70重量%(樹脂:6重量部+KOH:2重量部の場合)又は72.5重量%(樹脂:6重量部+KOH:3重量部の場合)となり、いずれも本件発明の上記規定の範囲内である。

第5  当裁判所の判断

1  引用例発明における重量平均分子量の不開示(取消事由1)について

審決の理由中、本件発明の要旨の認定、引用例の記載事項の認定、大阪報告書の記載事項の認定、本件発明と引用例発明の一致点の認定の一部(審決書13頁13行~14頁18行、15頁12~16行)及び「本件発明では、樹脂の重量平均分子量(Mw)は700~2000・・・であることが明示されているのに対し、甲第1号証では、これらの数値について明記されていない」(審決書15頁17行~16頁1行、相違点)ことは、いずれも当事者間に争いがない。

また、本件発明が、鋳造用鋳型及び中子の製造方法に関するものであり、鋳型及び中子用の粘結剤中に高縮合度のアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂を使用するため、当該樹脂を得る反応を一定の段階で止め、その重量平均分子量(Mw)を700~2000に限定した点に特徴があることも、当事者間に争いがない。

引用例(甲第4号証)には、「フェノールホルムアルデヒドレゾール樹脂の調製100%フェノール42.12重量部と50%ホルムアルデヒド水溶液53.7重量部とをステンレス製反応器内で32%苛性溶液1.5%を加えて得られたpH8.0にて80±2℃で3時間反応させた。反応器内の圧力を減じて温度を50-55℃まで降下させ、この温度で水は留去され25℃で400cSt(・・・)の粘度であった。ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン(・・・)0.25重量部を徐々に加え、樹脂を40℃に冷却して排出した。」(同号証訳文4頁3~9行)、「粒状耐火物質と粒状耐火物質の重量に関し0.8~5重量%のアルカリ性フェノール樹脂からなる結合剤及び樹脂硬化剤として樹脂重量の25~110重量%のラクトンとを混合して混合物を生成し次いでその混合物を硬化させることを特徴とする鋳造用鋳型または中子の製造法。」(同9頁14~17行)と記載されている。

これらの記載及び本件技術文献(丙第6号証)によれば、引用例発明は、本件発明と同様に、鋳造用鋳型及び中子の製造方法に関するものであり、鋳型及び中子用の粘結剤中に高縮合度のアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂を使用するため、アルカリ触媒の存在下で、pH8.0にて80±2℃で3時間加熱反応させ、フェノールとホルムアルデヒドとを縮合させ、その結果、加熱により反応が促進され、生成するレゾール樹脂は硬化していき、その硬化の程度が、25℃で400cStとして測定されたものと認められる。

参加人は、引用例に上記反応に係る加熱温度や反応時間等の条件は記載されておらず、加熱をしないと、重量平均分子量は、本件発明規定の上記重量平均分子量よりも低い値のままであるが、加熱反応を続ければ、当該樹脂の重量平均分子量は増大し、上記の範囲を超える値となってしまうから、引用例発明が、本件発明の重量平均分子量の数値範囲を開示するものではないと主張する。

しかし、引用例には、前示のとおり、高縮合度のアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂を得るため、アルカリ触媒の存在下で、pH8.0にて80±2℃で3時間加熱反応させることが明記されているから、参加人の主張には明らかに理由がない。そして、一般に、分子量の異なる分子の混合物である合成高分子物質において、その平均分子量と粘度の間には、所定の相関関係があり、かつ、粘度から計算される粘度平均分子量と重量平均分子量の間にも、所定の相関関係があることは技術常識であるから、このことに照らせば、25℃で400cStという上記粘度を呈するフェノールーホルムアルデヒド樹脂が、当該粘度に相応する粘度平均分子量及びこれと相応する重量平均分子量を有することは明らかである。したがって、引用例発明には、重量平均分子量に係る直接の記載はないとしても、当該アルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂が、上記粘度を担うに充分な所要の重量平均分子量を有する樹脂として、実質的に開示されているものといわなければならない。いずれにしても、参加人の上記主張を採用する余地はない。

また、参加人は、本件技術文献によれば、引用例発明のような塩基性のレゾール樹脂の重量平均分子量が、150~200とされていると主張する。

しかし、本件技術文献(丙第6号証)には、「フェノールとホルムアルデヒドの反応は、図8・1のように触媒によって2種類の第1次樹脂をあたえる.塩基性でできるレゾールとよばれる第1次樹脂は、・・・分子量がいかに小さいかわかる.」(同号証166頁1~11行)と記載されており、この記載及び図8・1によれば、上記第1次樹脂の分子量は小さいが、この第1次樹脂が、加圧加熱により硬化し、分子量の大きい第2次樹脂へと移行していくことが認められる。そうすると、引用例発明では、前示のとおり、80±2℃で3時間加熱反応させるものであるから、この反応条件下で得られるフェノールーホルムアルデヒドレゾール樹脂が、分子量の小さな第1次樹脂のままとどまっているとは考えられず、その重量平均分子量が、150~200であるとする参加人の主張は、到底採用することができない。

さらに、参加人は、キング報告書(甲第7号証)によれば、引用例発明の重量平均分子量が、200程度(同号証訳文5頁1行)とされており、大阪報告書の実験は誤りであると主張する。

同報告書には、以下のとおり記載されている。

「12.最初にEP0027333(注、引用例)の6ページに出ている指示に従い、EP樹脂を調製しました。EP樹脂は、以下の方法で調製しました。

(1)100%フェノール42.12重量部と50%ホルムアルデヒド水溶液53.7重量部とを、pH8.0にて80±2℃で3時間反応させた。pHは、32%水酸化ナトリウム溶液0.83重量部を加えて測定した。

(2)水を留去するため、温度を50~55℃まで降下させ、圧力を減じた。

13.留去中に試料を取り出して、直ちに室温まで冷却し、標準的なウベローデ粘度計を用いて、各試料の粘度を測定しました。試料2点について、下記の結果が見られました。

EP樹脂試料 粘度(センチストークス)

No1 350cST

No2 410cST

14.2つの試料を、そのままの状態で、その後すぐにGPC分析にかけると、下記の結果が見られました。

EP樹脂試料 重量平均分子量(Mw)

No1 200

No2 190」

(同号証訳文4頁5~21行)

この記載と前示引用例の記載(甲第4号証訳文4頁3~9行)とを対比すると、キング報告書記載の当該実験においては、レゾール調製における「32%苛性溶液1.5%」として、「32%水酸化ナトリウム溶液0.83重量部」を用いたことが認められる。ところで、溶液の混合割合(%)を設定する場合、溶液の重量を用いるのが最も一般的であるから、引用例発明における「32%苛性溶液1.5%」を、「1.5重量%」と解するのは自然なことであるが、この1.5重量%が、何に対する重量割合なのかは、引用例の記載からは明確でない。この点について、キング報告書記載の当該実験では、「32%水酸化ナトリウム溶液0.83重量部」が、「50%ホルムアルデヒド水溶液53.7重量部」の1.55%であり、「同0.83重量部」+「同53.7重量部」の1.52%であることから、「1.5%」を、水酸化ナトリウム溶液とホルムアルデヒド水溶液の混合溶液の重量に対する割合と解釈し、32%水酸化ナトリウム溶液の「0.83重量部」を用いたものと推測されるが、これは引用例の解釈の1追試態様にすぎない。また、引用例発明における「32%苛性溶液」を「32%水酸化ナトリウム溶液」として実験を実施したことも、決して誤りではないが、これも引用例発明を合理的に解釈した1追試態様にすぎない。

そして、フェノールとホルムアルデヒドの縮合反応において、「32%苛性溶液」のようなアルカリ触媒の種類及び量が、当該縮合反応に大きく影響を及ぼすことは技術常識であるから、この技術常識をも勘案すれば、キング報告書記載の当該実験は、引用例を当業者が合理的に解釈した1追試例であるが、これをもって引用例発明の全ての調製例を明らかにしたものでないことはいうまでもなく、同報告書で得られた上記重量平均分子量が、常に引用例発明におけるフェノールーホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量を開示するものでないことも明らかである。

したがって、キング報告書に基づいて大阪報告書記載の実験が誤りであるとする参加人の主張を、採用することはできない。

2  大阪報告書の問題点(取消事由2)について

参加人は、引用例発明の実施例において、フェノールーホルムアルデヒドレゾール樹脂の調整のため、「100%フェノール42.12重量部と50%ホルムアルデヒド水溶液53.7重量部」とを反応させるものと記載されているが、大阪報告書には、「フェノール1000g、50%ホルムアルデヒド水溶液1256g」と記載されており、これを重量部に換算すると、「フェノール43.95重量部とホルムアルデヒド水溶液55.21重量部」となるから、大阪報告書記載の実験は、引用例記載の実施例に準拠するものではないと主張する。

大阪報告書(甲第5号証)には、以下のとおり記載されている。

「1.アルカリレゾールの調製 攪拌装置、還流冷却器および温度計を付したフラスコにフェノール1000g(10.6mol)、50%ホルムアルデヒド水溶液1256g(20.9mol)と32%水酸化カリウム水溶液19.1g(0.11mol)をとり、攪拌下に80℃で130分間反応させた。反応後、還流冷却器を減圧蒸留装置に取り替え、50-55℃の温度で減圧脱水をおこなった。上記処方により調製した2種のレゾールの25℃に於ける粘度は次の通りであった。但し粘度測定はウベローデ粘度計によった。

レゾール 粘度(センチストークス)

No.1 350

No.2 460

全固形分量に対して水酸化カリウム量が23-24重量%となるアルカリレゾールをえるために、レゾールNo.1およびNo.2それぞれ10g当り50%水酸化カリウム水溶液5gを添加した。以下、レゾールNo.1およびNo.2よりえられたアルカリレゾールをそれぞれNo.1A、No.2Aとする。アルカリレゾールNo.1AおよびNo.2Aそれぞれ約2gを精秤し、100℃の熱風循環乾燥炉中で180分間加熱し、その固形分量を測定した。結果は次の通りである。

アルカリレゾール 固形分量(%)

No.1A 71.5

No.2A 72.0

2.ゲル排除クロストグラフィ用試料の作成と分子量の測定 アルカリレゾール10gを水10gに溶解したものを0.1%硫酸水溶液で中和した後、樹脂分を濾別、水洗、乾燥したものをゲル排除クロマトグラフィ用試料とした。ゲル排除クロマトグラフィによる重量平均分子量の測定は・・・の条件を用い、単分散ポリスチレンを標準物質として測定した。結果は次の通りである。

アルカリレゾール 重量平均分子量(ポリスチレン換算)

No.1A 1090

No.2A 1070」

(同号証1~2頁)

以上の記載によれば、大阪報告書では、フェノール量及び50%ホルムアルデヒド水溶液が、グラム「g」で表示されているが、この重量比1.256(50%ホルムアルデヒド1256g/フェノール1000g)は、引用例の前記記載(甲第4号証訳文4頁3~4行)における重量比1.225(50%ホルムアルデヒド水溶液53.7重量部/100%フェノール42.12重量部)に近似するものであるから、大阪報告書のレゾール調製におけるフェノール量及び50%ホルムアルデヒド水溶液量は、引用例発明の当該量に準拠するものといえる。なお、大阪報告書において、引用例発明における「32%苛性溶液1.5%」に対応するものとして用いられたアルカリ触媒の「32%水酸化カリウム水溶液19.1g」は、「50%ホルムアルデヒド1256g」の1.52%であり、「同19.1g」+「同1256g」の1.50%である。

したがって、大阪報告書におけるレゾール調製も、キング報告書における当該実験と同様に、引用例に準拠するものであり、引用例発明を合理的に解釈した1追試態様であるから、大阪報告書記載の実験が引用例記載の実施例に準拠するものではないとする参加人の主張を採用することはできない。そして、大阪報告書記載の実験に基づけば、引用例発明に実質的に開示された重量平均分子量は、本件発明の数値範囲内に含まれるものといえる。

また、参加人は、脱退原告報告書(甲第9号証)に基づき、大阪報告書記載の実験を追試すると、その反応直後のpHは、8.1であったから、当該実験は、引用例記載の実施例に準拠するものではないと主張する。

確かに、大阪報告書記載の実験において、その反応時のpHは明示されていないが、被告の行った大阪報告書記載の実験の追試実験の報告書である被告報告書2には、「攪拌装置、還流冷却器および温度計を付したフラスコにフェノール1000g(10.6mol)、50%ホルムアルデヒド水溶液1256g(20.9mol)と32%水酸化カリウム水溶液19.1g(0.11mol)をとり、攪拌下に80℃で180分間反応させた。反応開始直後のpHは、8.0であった。」旨記載されており(乙第4号証2頁7~10行)、被告報告書1にも同様の記載がある(乙第1号証1頁7~12行)から、大阪報告書記載の実験の反応開始直後のpHは、8.0であったものと認められる。

この点につき、脱退原告報告書(甲第9号証)に基づく大阪報告書記載の実験の追試の結果では、その反応直後のpHは、8.1であったものと認められるが、一般的に、pH8.1とpH8.0との数値差は実験誤差と考えるのが合理的であるし、仮に、引用例に基づく実験と大阪報告書記載の実験とのpHの間に、上記の差が生じたとしても、このことによって、引用例発明において得られるレゾール樹脂と大阪報告書記載の実験により得られるレゾール樹脂とが、物性の点で大きく異なると解するような特段の事情は認められないから、大阪報告書記載の実験が引用例発明に準拠するものではないということはできない。

以上のとおり、参加人の主張を採用する余地はない。

したがって、審決が、大阪報告書記載の実験において、「甲第2号証(注、大阪報告書)記載の実験は、甲第1号証(注、引用例)の記載に準拠して行われたものということができ、しかも、その実験結果を否定すべき根拠も発見しないのであるから、その結果は一応信頼するに足りると推定できるものであるのに対し、被請求人は、この推定を覆すに足りる証拠を提出していないことになる。従って、甲第1号証に記載された樹脂の重量平均分子量は、甲第2号証の実験結果からみて、本件発明が規定する範囲内のものとみるほかない。」(審決書19頁17行~20頁6行)と判断し、「甲第1号証には、樹脂の種類とその製造過程とが特定して記載されており、しかも、その記載された製造過程を経て実際に製造したときに、その樹脂の重量平均分子量が所定の値になるとすれば、甲第1号証に重量平均分子量は直接記載していないとしても、そのような重量平均分子量を持つ樹脂は開示されていると解すべきである。」(同20頁10~17行)と判断したことに、いずれも誤りはない。

3  引用例発明における常温硬化法の不採用(取消事由3)について

引用例(甲第4号証)には、「成分を混合する順序は重要ではないが、ラクトンを先ず砂と混合し、次に(もし使っているなら)シランを含んでいるフェノール樹脂を加え、ついでアルカリ溶液を加えた場合やや高い強度が得られることを我々は見出している。調合後直ちにその混合物をコアーボックス即ちパターン鋳型に充填し、硬化させる。この方法で造られた鋳造混合物を硬化させるのに要する時間は2分から24時間の幅があるが、5から45分の範囲内の硬化時間が得られるよう設定範囲を調節するのが好ましい。」(同号証訳文3頁21~26行)、「鋳造用砂中子混合物の調製 特に記述しない限り、以下の諸例には次の手順を採用した。選別した砂1000gをFordathの研究室用コアミキサーに入れ、上記のように作成されたフェノールホルムアルデヒド樹脂15gと1分間混合した。ついでラクトンを加え1分間混合した。最後に、アルカリをその混合物に加えさらに1分間混合した。混合物の一部を取り出して、・・・カップに詰込んだ。・・・円筒圧縮試験片を作成した。(全ての圧縮コアーは混合物を取り出してから3分以内に作成した)。圧縮コアーを20℃-50%RH(相対湿度)の標準大気中におき、圧縮強度をテストするため正規の時間間隔(24時間)をおいて取り出した。」(同4頁10~19行)と記載されている。

これらの記載によれば、引用例発明は、アルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂をラクトンや砂と混合した後、周囲温度中にて所要硬度に達する時間を調整することが可能であるとされるが、特にその段階で加熱処理を行うことは記載されておらず、所要硬度に達する時間及び所要硬度を把握するため、所要成分の混合物の一部から円筒圧縮試験片を作成し、圧縮強度を、標準大気中で、所定の時間間隔毎に測定するものであることが認められる。そして、このように、試験片の圧縮強度を標準大気中で測定することは、上記調整の工程における硬化自体が、標準大気中で行われていることを意味するものであるといわなければならない。

また、引用例記載の実施例1~21における硬化及び測定に係る温度条件(砂温度、周囲温度及び試験温度)によれば、上記試験片の硬化及び硬化の指標となる圧縮強度の測定が、いずれも常温の標準大気中でなされたものと認められるから、この点からも、上記工程における硬化が、常温の標準大気中で行われるものであることが明らかである。

そうすると、引用例発明において、所要硬度に達する時間は、常温硬化を前提とし、所要成分の量や比の調整により、適正範囲に調節されているものと認められ、引用例発明が本件発明のように常温硬化法を採用するものではないとする参加人の主張は、客観的根拠がなく、到底採用できない。

4  引用例発明における固体物含量(取消事由4)について

参加人は、本件発明における、カリウムアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂の水溶液の固体物含量は50~75重量%であるが、引用例には、「実施例では、KOHの50%水溶液及び固体含量約80%のフェノール樹脂が使われる」(甲第4号証訳文3頁14~15行)と記載されており、この実施例における固体物含量は、本件発明における固体物含量と同じでないと主張する。

しかし、引用例(甲第4号証)には、「この発明に使われるフェノール樹脂は、典型的には60~95重量%の固形分を有し、25℃で0.5~100ポイズの範囲の粘性を有する。」(同号証訳文2頁28~30行)と記載されており、引用例発明においては、60~95重量%の固形分を有するフェノール樹脂が、所要濃度のアルカリ水溶液とともに用いられており、本件発明の固体物含量(重量%)と引用例発明のそれとは、前記のとおり、常温硬化を前提として、数値が重複するものであることが明らかである。

そして、引用例発明の実施例では、固体含量約80%のフェノール樹脂とKOHの50%水溶液が用いられるものであるが、本件発明のような砂等の粒状耐火材料の結合剤としては、樹脂の固体物含量が重要であるから、固体物を樹脂分のみとして、実施例である固体含量約80%のフェノール樹脂について、その固体物含量(重量%)を計算する(小数点以下四捨五入、以下同じ。)と、以下のとおり、実施例6の場合は57%、実施例7の場合は55%となり、これらの数値は、いずれも本件発明の水溶液の固体物含量50~75重量%と重複する。

実施例6

57重量%=6〔樹脂〕×80%÷(6〔樹脂〕+2.4〔50%KOH〕)

実施例7

55重量%=6〔樹脂〕×80%÷(6〔樹脂〕+2.8〔50%KOH〕)

また、仮に、固体物に50%KOHを含めて同様に計算するとしても、実施例6の場合は71重量%、実施例7の場合は70重量%となり、いずれも本件発明の水落液の固体物含量50~75%と重複することとなるから、参加人の上記主張を採用する余地はない。

また、参加人は、引用例発明において、固形物含量の上限とされる95%を用い、被告ら主張に係る式に従い、上記樹脂水溶液中の固形物含量を計算すると、80重量%となって、本件発明の上記固体物含量の範囲外となると主張する。

しかし、前示のとおり、固体物を樹脂分のみとして上記同様に固体含量95%のフェノール樹脂について、その固体物含量(重量%)を計算すると、以下のとおり、63%となる。

63重量%=6〔樹脂〕×95%÷(6〔樹脂〕+3〔50%KOH〕)

この数値は、本件発明の水溶液の固状物含量50~75重量%の範囲内に含まれるし、そもそも引用例発明の開示する数値範囲内の限界値が本件発明の数値範囲の一部から除外されるからといって、両発明がその重複する数値の限度で同一であることが左右されるものでないから、参加人の上記主張はそれ自体失当なものといわなければならない。

5  以上のとおり、参加人の審決取消事由にはいずれも理由がなく、その他審決に取り消すべき瑕疵はない。

よって、参加人の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担及び付加期間の指定につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

平成6年審判第12883号

審決

東京都中央区日本橋茅場町一丁目14番10号

請求人 花王クエーカー 株式会社

東京都中央区日本橋茅場町一丁目14番10号

請求人 花王 株式会社

東京都中央区日本橋堀留町1丁目8番11号 日本橋TMビル 古谷特許事務所

代理人弁理士 古谷馨

東京都中央区日本橋堀留町1丁目8番11号 日本橘TMビル 古谷特許事務所

代理人弁理士 溝部孝彦

東京都中央区日本橋堀留町1丁目8番11号 日本橋TMビル 古谷特許事務所

代理人弁理士 古谷聡

東京都中央区日本橋横山町1番3号 中井ビル 古谷特許事務所

代理人弁理士 持田信二

英国サザンプトン エス05 9ゼットビー ノース バツデスレイ(番地なし)

被請求人 ボードン(ユーケイ)リミテッド

東京都千代田区大手町2丁目2番1号 新大手町ビル206区 湯浅法律特許事務所

代理人弁理士 湯浅恭三

東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル206号 湯浅・原法律特許事務所

代理人弁理士 社本一夫

東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル206号 湯浅・原法律特許事務所

代理人弁理士 戸水辰男

上記当事者間の特許第1554030号発明「鋳造用鋳型および中子の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

特許第1554030号発明の特許を無効とする。

審判費用は、被請求人の負担とする。

1.手続の経緯

本件無効審判の対象となる特許(以下、「本件特許」という。)は、昭和58年1月21日(優先権主張1982年(昭和57年)1月21日、英国)に出願され、出願公告(特公昭61-43132号公報参照)後の平成2年4月4日に特許第1554030号として設定登録されたもので、その後、さらに、願書に添付した明細書の訂正をすることについて、特許法第126条第1項に基づく審判(審判平3-25277号)が請求され、訂正を認める旨の審決が確定している(確定登録日平成7年4月11日、特許審判請求公告第749号参照)。

2 本件特許発明の要旨

本件特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)の要旨は、前記の訂正がなされた明細書の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。

「下記の各工程からなる鋳造用鋳型および中子の製造方法。

(Ⅰ) 粒状耐火材料を、下記(a)、(b)および(c)から成る粘結材と混合する工程。

(a)耐火材料の重量に基づき0.25~2.5重量%のカリウムアルカリ性フェノールーホルムアルデヒド樹脂の水溶液。ただしこの水溶液の固状物含量は50~75%であり、該樹脂の重量平均分子量(Mw)は700~2000、ホルムアルデヒド:フェノールのモル比は1.2:1から2.6:1であり、KOH:フェノールのモル比は0.5:1~1.2:1であるものとする。

(b) 該水溶液の重量を基準にして0.05~3重量%の少なくとも一つのシラン、および

(c) 該水溶液の重量を基準として20~110重量%の、C1-10アルキルー価または多価アルコールとC1-10カルボン酸との低分子量ラクトンまたはエステルの少なくとも一つ。

(Ⅱ) 混合物を周囲温度中にて中子取りまたは模様型に注入する工程、

(Ⅲ) 樹脂を周囲温度中にて硬化するに任せる工程。」

3.当事者の主張

(請求人の主張)

請求人は、

甲第1号証:欧州公開特許第27333号公報

甲第2号証:「アルカリレゾールの調整とその分子量測定」と題する大阪市立工業研究所長 平嶋恒亮による平成4年2月7日付け報告書

甲第3号証:特開昭50-130627号公報

甲第4号証:特公昭46-147号公報

甲第5号証:昭和46年11月25~27日の日付が記載された第21回 熱硬化性樹脂講演討論会要旨 24A 「レゾールのラクトンによるゲル化について」

甲第6号証:欧州特許第85512号に対する異議申立事件における1986年6月6日付け答弁書

甲第7号証:「アルカリレゾールの調整とその分子量測定」と題する大阪市立工業研究所長 富永嘉男による平成7年7月26日付け報告書

甲第8号証:本件特許に係る出願の分割出願についての特許異議の決定の写し

を提出すると共に、概要次のイ~ハのとおり特許無効の理由を主張する。

特許無効理由イ

本件発明は、本件優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許法第29条第1項柱書きの規定に違反して特許を受けたものである。

特許無効理由ロ

本件発明は、本件優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第3~5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものである。

特許無効理由ハ

本件特許に係る明細書の記載には、フェノールホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量を測定するための方法を明確にしていない不備があり、特許法第36条第4、5項の規定を満たしていないにもかかわらず、特許を受けたものである。

(被請求人の主張)

一方、上記請求人、の主張に対し、被請求人は、

乙第1号証:神戸理化学工業株式会社、研究部末広史朗による平成4年2月20日付け実験成績書

乙第2号証:ピーター・レイモンド・ラドラムの宣誓供述書

乙第3号証:デビッド・M・ウイルスの宣誓供述書

乙第4号証:JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCEI-ENCE 第16巻(1972)第1585~1602頁

を提出し、

上記特許無効理由イに対しては、甲第1号証には、本件発明の構成要件である、カリウムアルカリ性フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量と、KOH対フェノールのモル比が記載されておらず、本件発明は、甲第1号証記載の発明とはいえないし、

同理由ロに対しては、前記の重量平均分子量とモル比については、甲第3~5号証にも、記載がないのであるから、本件発明が甲第1号証及び甲第3~5号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえず、

同理由ハに対しては、本件特許に係る明細書で、重量平均分子量の測定方法は明確であり、請求人が主張する不備はない

旨を主張している。

4. 当審の判断

[特許無効理由イについて]

〈甲第1号証の記載事項〉

(ⅰ)

(A)-1「粒状耐火物質と粒状耐火物質の重量に関し、0.8~5重量%のアルカリ性フェノール樹脂からなる結合材及び樹脂硬化剤として樹脂重量の25~110重量%のラクトンとを混合して混合物を生成し、次いで、その混合物を硬化させる鋳造用鋳型または中子の製造法。」(第12頁第25~32行(訳文第9頁第14~17行)参照)

「アルカリ性フェノール樹脂は、樹脂の硬化を促進するアルカリを含んでおり、好ましいアルカリは水酸化カリウム(KOH)である。実施例では、KOHの50%水溶液及び個体含量約80%のフェノール樹脂が使われるため、アルカリ量は、最適には、(樹脂重量の)20~30%の間である」(第4頁第28行~第5頁第17行(訳文第3頁第7~16行)参照)

「好ましい(フェノール樹脂の)材料は、フェノールとホルムアルデヒドであり、フェノールのアルデヒドに対するモル比は典型的には、1:1.0~1:3.0である。」(第4頁第5~9行(訳文第2頁第23~26行)参照)

また、第9頁(訳文第6頁)の実施例6、7によれば、砂400重量部に対して、(フェノール)樹脂は6重量部、KOH50%水溶液は2.4または2.8重量部の割合とされている。

(A)-2「フェノール ホルムアルデヒドレゾール樹脂の調整

100%フェノール42.12重量部をステンレス容器内で、50%ホルムアルデヒド水溶液53.7重量部と32%苛性溶液1.5%を加えて、pH8.0にて80±2℃で3時間反応させた。反応容器内の圧力を減じて温度を50~55℃まで降下させ、この温度で水は留去され25℃で400cStの粘度であった。」(第6頁第9~21行(訳文第4頁第3~9行)参照)

(B)「結合強度を高めるため、接着促進材として、例えばアミノプロピルトリエトキシシランのようなシランをこの発明の組成物に添加するのは好ましい。使うシランの量は、典型的には樹脂の重量に対し、3重量%まで、好ましくは0.1~0.5重量%であろう。」(第4頁第22~27行(訳文第3頁第4~6行)参照)

(C)「ラクトンとしては、典型的にはプロピオラクトン、ブチロラクトン、ラクトンの比率は樹脂の重量に対して25~110重量%」(第5頁第18~24行(訳文第3頁第17~20行)参照)

(ⅱ)

「成分を混合する順序は重要でないが、ラクトンを砂と混合し、シランを含んでいるフェノール樹脂、ついでアルカリ溶液を加え、調合後直ちにその混合物をパターン鋳型に充填し」(第5頁第25行~第6頁第3行(訳文第3頁第21~24行)参照)

(ⅲ)

「(硬化時間を調べるための鋳造用砂中子混合物を詰めた)圧縮コアーを20℃-50%RH(相対湿度)の標準大気中に置き」(第6頁第22行~第7頁第10行(訳文第4頁第10~19行)参照)

〈甲第2号証の記載事項〉

(1)アルカリレゾールの調製

撹拌装置、還流冷却器及び温度計を付したフラスコにフェノール1000g、50%ホルムアルデヒド水溶液1256gと32%水酸化カリウム水溶液19.1gをとり、撹拌下に80度Cで180分間反応させた。反応後、還流冷却器を減圧蒸留装置に取り替え、50~55度Cの温度で減圧脱水を行って、粘度(センチストークス)350と460の2種のレゾールを得た。

このそれぞれのレゾール10gに、50%水酸化カリウム水溶液を、全固形分量に対し水酸化カリウム量が23~24%となるように加え、加熱乾燥させて2種のアルカリレゾールとした。

(2)重量平均分子量の測定

各アルカリレゾール10gを、水10gに溶解させ、0.1%硫酸水溶液で中和後、濾別、水洗、乾燥して、試料とした。

この試料を、Shodex 80M-803-802なるカラムを用い、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル排除透過クロマトグラフィによって、単分散ポリスチレンを標準物質として重量平均分子量を測定し、1090、1070という結果が得られた。

〈甲第7号証の記載事項〉

撹拌装置と温度計を付したフラスコを用い、甲第2号証の場合と同様の材料、同様の反応温度・反応時間とし、

(1)還流冷却器を用い、撹拌速度(rpm)230、300、410の反応条件、

(2)還流冷却器を用いない密封状態で、撹拌速度300rpmの反応条件で、

それぞれレゾールの調整を行い、甲第2号証の場合と同様にアルカリレゾール試料を作って重量平均分子量を測定し、

(1)の反応条件では、各撹拌速度に対応して、1250、1250、1210、

(2)の反応条件で、1260

という結果を得た。

〈乙第1号証の記載事項〉

甲第1号証記載のフェノールホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量を測定するため、フェノール420g、50%ホルマリン水溶液540gを撹拌器、温度計、コンデンサーを備えた1L4つ口フラスコに仕込み、撹拌しながら、PH8となるまで32%水酸化ナトリウム水溶液15gを加え、80℃で、3時間反応させた。次いで、液温を50~55℃まで冷却し、粘度が400cstになるまでフェノール樹脂中の水を減圧留去した。

このフェノール樹脂の重量平均分子量は705であった。

〈発明の対比〉

本件発明と甲第1号証の上記の記載とを対比する。(以下の記載において、単に「樹脂」というときは、「カリウムアルカリ性フェノール-ホルムアルデヒド樹脂」を、「樹脂水溶液」というときは、「カリウムアルカリ性フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の水溶液」をそれぞれ意味する。)

甲第1号証の(A)-1の記載において、砂に対して樹脂水溶液(樹脂とKOH水溶液の合計)が占める重量%と、樹脂水溶液中の固状物含量及びホルムアルデヒドとフェノールのモル比は、いずれも本件発明の(a)で指摘する数値範囲に入り、同じく甲第1号証の(B)で指摘する樹脂に対するシランの重量%の数値は、本件発明の(b)で指摘する樹脂水溶液に対するシランの重量%の範囲内のものとなる。また、甲第1号証の(C)で例示されるプロピオラクトンやブチロラクトンは、本件発明の(c)でいう低分子量ラクトンに相当している。

さらに、甲第1号証の(ⅱ)、(ⅲ)の記載は、それぞれ本件発明の(Ⅱ)、(Ⅲ)の記載と同じことを意味しているとみてよい。

そうすると、本件発明と、甲第1号証記載の発明とは、

「下記の各工程からなる鋳造用鋳型および中子の製造方法。

(Ⅰ) 粒状耐火材料を、下記(a')、(b)および(c)から成る粘結材と混合する工程。

(a')耐火材料の重量に基づき0.25~2.5重量%の樹脂水溶液。ただしこの水溶液の固状物含量は50~75%であり、(樹脂中の)ホルムアルデヒド:フェノールのモル比は1.2:1~2.6:1であり、

(b) 樹脂水溶液の重量を基準にして0.05~3重量%の少なくとも一つのシラン、および

(c) 樹脂水溶液の重量を基準として20~110重量%の、C1-10アルキルー価または多価アルコールとC1-10カルボン酸との低分子量ラクトンまたはエステルの少なくとも一つ。

(Ⅱ) 混合物を周囲温度中にて中子取りまたは模様型に注入する工程、

(Ⅲ)樹脂を周囲温度中にて硬化するに任せる工程。」

である点では一致しているが、

「本件発明では、樹脂の重量平均分子量(Mw)は700~2000、樹脂水溶液中のKOH:フェノールのモル比は0.5:1~1.2:1であることが明示されているのに対し、甲第1号証では、これらの数値について明記されていない」点で一応の相違がある。

〈相違点の検討〉

[樹脂水溶液中のKOH:フェノールのモル比について]

甲第1号証中の(A)-1には、樹脂を構成する「フェノール-ホルムアルデヒド樹脂」の固体含量とフェノール:アルデヒドのモル比とが、樹脂水溶液中の「フェノール-ホルムアルデヒド樹脂」と50%KOH水溶液との混合比と共に明記されており、また、(A)-2には、「フェノール-ホルムアルデヒド樹脂」製造時に使用する苛性溶液(KOH)の濃度と割合が表示されている。

従って、甲第1号証に、樹脂水溶液中のKOH:フェノールのモル比は直接明記されていなくても、その値は明らかに計算可能であり、その計算の結果は、請求人が主張するように約0.7:1~0.8:1であって、本件発明の0.5:1~1.2:1という数値の範囲内となる。

[樹脂の重量平均分子量について]

甲第2号証記載の実験結果によれば、甲第1号証に記載されている樹脂の製造過程について追試を行った結果、樹脂の重量平均分子量は、1090または1070となり、本件発明の700~2000の範囲内となったとしている。

これに対し、被請求人は、甲第1号証には、撹拌や還流等に関する条件が記載されておらず、甲第2号証の実験では、これらの条件が恣意的に決定されているし、更に、甲第2号証と同様の実験を行っているはずの、乙第1号証記載の実験結果によれば、樹脂の重量平均分子量は705であり、甲第2号証の実験結果と大きく相違するから、これらの点からみて、甲第2号証の実験結果に信憑性はない旨を主張している。

そこで、両者の主張について、その是非を検討する。

甲第2号証の実験について、レゾール(フェノール樹脂)調整のための材料や反応条件をみると、基本的に上記(A)-2に記載されたものと同じであり、樹脂であるアルカリレゾールを得るためのKOH添加量も、上記(A)-1の「アルカリ性フェノール樹脂は樹脂の硬化を促進するためのアルカリを含んでいる。アルカリ量は最適には、(樹脂重量に対し)20~30%の間」という記載と合致しており、この実験材料や反応条件は、甲第1号証の記載に準拠したものである。そして、甲第7号証によれば、甲第2号証の場合と同様の実験を、撹拌のための回転数や還流の有無という条件を変えて行った結果、撹拌回転数の相違や、還流の有無にかかわらず、樹脂の重量平均分子量は、1210~1260となったとしている。

一方、乙第1号証の実験では、フェノールとホルムアルデヒドを反応させるためのアルカリとして、甲第2号証記載の実験で使用されているKOHとは相違するNaOHを用いているばかりではなく、甲第1号証記載の「(フェノール樹脂の硬化を促進するためのアルカリを含む)アルカリ性フェノール樹脂」(アルカリレゾール)を得るための手段も明確にされていないから、乙第1号証の実験は、甲第2号証の実験と同一条件のものとみることはできない。従って、乙第1号証の実験結果と、甲第2号証の実験結果とが相違するからといって、甲第2号証の実験結果に信憑性がないとはいえない。

また、甲第7号証の1210~1260という数値は、甲第2号証の1090あるいは1070とは約11~18%相違しているが、この程度の相違は、実験材料であるフェノールやホルムアルデヒドの製造ロットによる不純物の相違や測定誤差など不可避的に生じる範囲内のものとみなしうるから、この数値の相違も甲第2号証の実験結果に信憑性がないとする根拠とはいえない。(しかも、仮に1070~1090という数値に対して、20%程度の増減があっても、本件発明の700~2000の範囲内にあることは明らかである。)

そうすると、甲第2号証記載の実験は、甲第1号証の記載に準拠して行われたものということができ、しかも、その実験結果を否定すべき根拠も発見しないのであるから、その結果は一応信頼するに足りると推定できるものであるのに対し、被請求人は、この推定を覆すに足りる証拠を提出していないことになる。

従って、甲第1号証に記載された樹脂の重量平均分子量は、甲第2号証の実験結果からみて、本件発明が規定する範囲内のものとみるほかない。

なお、被請求人は、仮に甲第2号証の実験結果が正しいとしても、甲第1号証には、樹脂の重量平均分子量を開示しているものとみるべきではない旨も主張する。しかし、甲第1号証には、樹脂の種類とその製造過程とが特定して記載されており、しかも、その記載された製造過程を経て実際、に製造したときに、その樹脂の重量平均分子量が所定の値になるとすれば、甲第1号証に重量平均分子量は直接記載していないとしても、そのような重量平均分子量を持つ樹脂は開示されていると解すべきである。

以上、相違点の検討の結果によれば、その相違点は実質的には意味のないものであり、本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一のものとい『える。

6. むすび

以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、本件特許は特許法第29条第1項柱書きの規定に違反して受けたものといえるから、本件無効審判の請求には、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する正当な理由があり、上記特許無効理由ロ、ハについて検討するまでもなく、本件特許は無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

平成7年11月20日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

請求人被請求人 のため出訴期間として90日を附加する。

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